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静かな高級住宅街にぽっかりと灯りが…
 
木目調のシックな外観
 
大きなフレンチ窓が開放的
 
野菜たっぷりアボカドサンドイッチ
 
ブラウニーにバニラアイス、フレッシュストロベリーソースかけ


           § カフェ・ラロ §


ニューヨークは映画の舞台によくなる。

ニューヨーク近郊の町からグランドセントラル駅へ向かう通勤電車でメリル・ストリープロバート・デニーロが出会うラブ・ストーリー「恋に落ちて」、スタッテンアイランドから通勤フェリーに乗ってウォール街へ出勤するメラニ−・グリフィスハリソン・フォードと出会ってのし上がっていく「ワーキング・ガール」「スパイダーマン」にいたってはいつもマンハッタンのビル街を飛び越えながら、暴走する地下鉄だって蜘蛛の糸で制御してしまうほどだ。

そんなニューヨークでここだけは訪れてみたかった場所がある。カフェラロである。

そう、我が敬愛するトム・ハンクスとキュートなメグ・ライアンが商売敵の本屋同士でいがみ合いながら、匿名メールのやりとりをするうちに恋の花を咲かせるという「ユー・ガッタ・メール」の舞台になったカフェである。

生まれつきどうみても美人系でない私なので、若い日を乗り切るにはせめて愛嬌のあるキャラを目指すしかなかった。だからダンゴ鼻なのに魅力的なメグ・ライアンを初めて「プレシディオの男たち」というショーン・コネリー主演の映画で見た時、この線ならあながち夢物語ではないかも知れないと錯覚をしてしまった。

本当はスーパーモデル出身の足の長〜いレネ・ルッソが理想であるので、それに比べるとメグ・ライアンはいかにも庶民的、頑張ればあのキュートな雰囲気に近付けるかもと大いなる勘違いをしてしまったのだ。

元来、彫りの深いアングロサクソン系のダンゴ鼻とモンゴル系黄色人種のダンゴ鼻では、鼻梁の高さからするとその形態の違いたるや明らかである。にも拘らず若い日の思い込みというのは恐ろしい。以後、メグ・ライアンになるべく、彼女の出る映画はことごとくチェックし、そしておばはんになった今も「ライク メグ・ライアン…」を呪文のように唱えながら美容院へ通っている。

ただし、いまだかつてメグ・ライアンに似ていると言われたことはない。髪の色を明るくすればするほどお笑い系に近づき、漫才の正司敏江からせいぜいが『勉強しまっせ引越しのサカイ〜♪』で踊っていたフラワーショーのぼたん嬢止まりである。現実は厳しい。

しかし、見てくれはともかく、その気になるのが私の特技である。夏のなごりの日が落ちたある日の夕刻、アッパーウェスト83丁目にあるその店「カフェラロ」へ出かけた。

アッパーイーストが昔からリッチな人たちが住む街として知られているのに比べ、ここアッパーウェストは新しく拓けた高級住宅街である。セントラル・パークとハドソン川の間に位置し、一流文化が集結するリンカーンセンターも近く、芸術系大学が点在するので若者の活気で溢れ、なにやら文化の薫りの高い人たちが多いように感じる。

道行く人は小型犬を連れ、ラフなスウェットスーツ姿で通り過ぎる。スウェットスーツであるが、「G」マークのギャップではない。もひとつDが付く「DG」、ドルチェ&ガッバーナである。

なんでもマンハッタンで犬を飼うというのはひとつのステータスシンボルなんだそうだ。家賃も高い、獣医さんも人間の医者より高い、そんなマンハッタンで暮らしながら犬を飼っているのよというのが、バリバリニューヨーカーの証なんだそうである。

さて、そんな住宅街の一角、鬱蒼と繁る街路樹の影を受けてカフェラロは佇む。大きく開かれたフレンチ窓からは秋を思わせる風が流れて、オープンカフェのような趣である。近所の住人たちが思い思いにお茶を飲みながら、本を読みふける者、友人とお喋りに興じる者、それぞれの時間を楽しんでいた。

映画のワンシーンを思い浮かべ、メグ・ライアンが座ったであろう席に陣取った。そして野菜たっぷりアボカドサンドイッチにかぶりつきながら、目だけはキョロキョロとトム・ハンクス似の男性を探したが、隣の席ではマコ−レ・カルキン似のクソガキが騒ぐばかりであった。

現実は厳しい。

 

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