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心斎橋そごう12階 丸善書店
 
サイン会案内看板
特設開場をぐるっと取り巻く長蛇の列

@左の女性が本とファンの名前を差し出し
A先生がサイン
B立ってるおっさんが落款を押し
C右のおっさんがドライヤーで乾かす
見事な連携プレーです!

そして最後は記念撮影
浅田次郎氏のお姿
(左の肩は私…うふっ、ツーショットゲット!)
楠屋敏の名前でサインを頂きました!うれしくてバラなんぞを添えてみました…
新潮社刊 浅田次郎著 「憑神」
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§ 浅田次郎サイン会 §


大好きな作家浅田次郎氏
のサイン会が開かれる―浅田次郎追っかけ仲間である友人のお母様から情報をいただいた。「本買うてね、整理券をもらわなあかんよ」とご指導いただき早速本屋さんに電話。サイン会出席のための整理券は100枚用意されているものの残り僅かということで取り置きをお願いした。そして今朝、初めてのデートに赴くような気分で、JRを大阪地下鉄御堂筋線に乗り継いで出かけた。目指すは最近リニューアルオープンした心斎橋そごう12階、丸善書店である。

大阪は苦手だ。地下も地上も方向が判らない。ひたすら地下街の表示板を睨みつつ歩く。どうやら最近兆してきた老眼で手元を見るのも危ういのだが、かといって遠目が利くわけでもなく、かすみ目をシバシバさせながらなんとか辿り着いた。

地下鉄御堂筋線心斎橋駅の改札を出ると目の前がそごうデパートの入り口である。目を横へ向けると大丸デパートの入り口も並ぶ。こんなモロ隣り合わせだとさぞ競争も激しいだろうな…と思いつくと更に想像は広がる。

それぞれのデパートに勤める男女が、地下鉄改札口目指して出会い頭にぶつかる。落とした定期券を取り違え、後日交換するために会ったその時からふたりは恋に落ちる男は「そごう」の若手営業マン女は「大丸」のやり手宣伝企画部長、もちろん女が年上でバツイチ子持ちである。女は自分の立場に引け目を感じつつも募る恋心に身を焦がし、男は若いが最近のチャラ子には目もくれない硬派、快男子、そう、見てくれは平井堅似としよう。女はそうね、キレる安藤優子風でいくか。折しも来季売り出し商戦の企業トップシークレット漏洩事件が起きる。お互いプライベートな面では信頼しあいながらも、ふと心の片隅に起きる疑心。それに別れた安藤優子の夫(これは西岡徳馬でいく)がまだ元妻に未練を残し、彼がまた広告業界の重鎮であったことからその権力を利用してふたりの恋路に横槍を入れる…。♪こぬか〜雨降る〜御堂筋〜を背景にふたりの恋の行方は如何に……と浅田次郎に会いに行くから頭の中はすっかり小説モードである。

土曜日の午後とあってそごう入り口のエレベーター前は上階へ行く人の長蛇の列である。それを避けて12階までエスカレーターを利用した。リニューアルされた美しい店内を眺めながら12階に到着。しかしそこにはまたしても長蛇の列、こちらはサイン会目当てに押しかけた浅田次郎ファンである。早速私も本をゲットして「こちらが最後尾」という看板を掲げた書店店員のところへ向かう。大きな看板を掲げながら場内整理にあたるそのおニイさんによると、整理券は100枚用意したもののそれでは足りず、130人ほどの人が列に並んだそうだ。さすが我らの浅田次郎である。

場内を取り巻く列から特設開場中央の浅田次郎氏を眺める。おお……、あれがイタリアの帽子屋でようやく特大ボルサリーノを見つけたという巨大なおつむだ。あの控えめなオグシを火焔太鼓のごとくおったてて日夜文机に向かわれているのだ。あの手が愛犬パンチ号のリードを引いて毎朝散歩に向かわれるのだ。あの御身のパンツの中の温もりで瀕死の鼠の赤ちゃんを育てられようとしたのだ。そしてあのお姿で時々本屋さんの書棚の影で「木挽き」を執り行い、出そうなウ●コを我慢されるのだ。感動のあまり浅田先生にまつわるエピソードが一気に頭の中を駆け巡った。

母が存命中、読書好きだった母の病床にも「浅田次郎の本」をよく運んだ。「日輪の遺産」は時と場所を違えて母と共に読み、そしてふたりとも最後近くの場面で「あっ」と声を上げた。戦時中の軍国の少女たちを描いたこの作品は、同じように勤労奉仕の学生として少女時代を過ごした母にとって初めて読むのに懐かしい作品であったらしい。ネタばらしになるといけないので詳しくは書けないが、人物を通して戦時と現代が繋がるその手法のうまさに思わずあっと声が出てしまったのだ。涙はともかく本を読んでいて声が出てしまったというのは初めてである。

かつて海外で過ごした5年間、渡航に際しては「浅田次郎の本」を買い込んだ。海外では日本の書籍は手に入り難いと聞いた。ニューヨークの紀伊国屋で買っても値段は倍近くもするという。で、日頃は家計を睨みながら計画的に購入していた単行本、しばし家計簿を閉じて「えいやっ」とばかりまとめ買い。それ以後一時帰国の度にトランクには浅田次郎の新刊本を詰めてアメリカに戻った。

泣きたいときには「地下鉄(メトロ)に乗って」、号泣したいときには「角筈にて」(「鉄道員」収録)、笑いたいときには「プリズン・ホテル」、スカッとしたいときには「天切り松闇がたり」、雄大な気分に浸りたいときには「蒼穹の昴」、そして元気になりたいとき手に取った「勇気凛凛ルリの色」全4巻は何度読み返したことだろう。そして帰国後は「壬生義士伝」「輪違屋糸里」を読んであれだけ嫌いだった日本史に興味が湧いている。

列をなすファンの為にひとりひとりの名前を書きサインをくださる。握手を交わし求められれば笑顔で一緒に写真に納まってくださる。順番を待ちながら、今まで読んだ作品やそのにじみ出るお人柄に思いを馳せた。いよいよ私の順番、「いつか浅田次郎のような優しく強い文章が書きたい」そんな思いを込めて「楠屋敏」宛てのサインを頂戴した。固く握手も交わしていただいたが、気がつくと厚かましく握り返していた。

これより風呂場にて身を清め、沈思黙考、精神統一の後、正座して拝読いたす所存、新潮社刊、浅田次郎著、「憑神(つきがみ)」である。





 

 

 

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