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☆カーソルを近づけると写真が替わります
競馬場へは地下道とアーケードで直結
☆阪急仁川駅
競馬場入り口
☆阪神競馬場
艶やかな毛並みと引き締まった筋肉美
☆パドックで出走馬を観察
☆パドックで出走馬を観察
ここでは吉野家の牛丼が食べられます
名前が気に入って買った単勝の馬券
スティルインラブ
勝った人は大歓声
☆レースに熱中する群集

阪神競馬場名物の「のぞみちゃん」
実は一級建築士のおっさんだそうです

 
外れ馬券のゴミの山
☆レースに夢中になった後は…
 
第10レースを当ててご機嫌のA君
 
負け組は立ち飲み屋で憂さ晴らし
☆こちらは勝ち組。椅子のある焼き鳥屋
 
疾駆するサラブレッドたち

 

 

 


        
        
          § 競馬デビュー §


初めて競馬観戦をした。レースは第46回宝塚記念GT。

学生の頃、阪急今津線を利用していたのだが、仁川駅にある阪神競馬場へ向かうおっさんたちをよく見かけた。競馬新聞片手にラフなスタイル、耳には赤鉛筆を挟み、念の入った者はイヤホンでラジオの競馬放送を聴きながら、という姿はどう見てもおしゃれというには程遠かった。だから競馬というもののイメージがイマイチで出かける気にもなれなかったのだが、最近そのイメージが変ってきているという。

そういうおっさんたちに混じって、家族連れやカップル、そして若い女性たちもよく競馬場へ足を運んでいるというのだ。どうやら数年前からキムタクやさんまを起用してのテレビCMが功を奏しているらしい。それなら一度出かけてみたいと思ったものの、こちらはずぶの素人、競馬解説をしながら案内してくれる人はいないものかと探していたら、息子の親友のA君が買って出てくれた。

実はこのA君、私たち家族が海外在住で日本を留守にしている時、息子が大変お世話になった人物である。

私たちより1年遅れて息子もフロリダに移ったのだが、家族不在の当初1年間、夫の実家に居候をして息子は学校に通った。18歳の大学生が親の目の届かぬ学生生活をどのように過ごしたかは、想像するに難くない。

「ゆうちゃんがA君の家に泊めていただく言うて、また家に帰らへんのよ」

と実家からアメリカの私たちへ国際電話がかかる。

「すみません、いつも心配ばかりおかけして…」

と謝りつつ、どうせまた酒を飲んでどこかの友人の家に転がり込んでいるのだろうと思っていた。 

A君宅に…と祖父母には言っているものの、A君だかAちゃんだか知れたもんじゃない、私はA君が実在人物だとは思っていなかったのである。だから去年秋に帰国した時、

「ずっとお世話になってたA君や」

と息子に彼を紹介された時、お礼を言うより先に

「へえ、A君ってほんまにおったんや」

と、大変失礼な挨拶をA君にしてしまった。以来、岡山の実家を離れて独り暮らしを続けるA君を巻き込んで、ご両親には真に申し訳ないが息子がひとり増えたようにお付き合いさせていただいている。

そのA君が今回好奇心旺盛のおばはんをエスコートしてくれたのであるが、朝も早よから場所取りに出かけてくれた。そして、「日陰の場所は確保しました、既に日差しはかなりきついのでその準備をしてお出かけください」との丁寧なメールを戴いた私は、普段よりもUVメークを念入りに施し、サングラスに帽子を目深にかぶり、日傘持参で悠々午後から競馬場へ出かけた次第である。

乗換駅の阪急西宮北口駅にはスマップの仲居君が微笑む宝塚記念競馬の大きなポスターが張り巡らされ、午後3時過ぎのメインレースへ向かう人達で溢れ返る。今津線に乗り換えて仁川駅に着くと、ほとんどの客が阪神競馬場出口へと吐き出される。駅から競馬場へは美しく整備された地下道を通って直結、これなら雨の日でも濡れずに行けるというわけだ。

日本には現在NAR(The National Association of Racing 地方競馬全国協会)JRA(Japan Racing Association 日本中央競馬会)があるのだが、今日訪れたのはJRAが主催する競馬である。

JRAでは年間3450ものレース全国10箇所(札幌、函館、福島、新潟、中山、東京、中京、京都、阪神、小倉)の競馬場で毎週土日に開催されている。すべてのレースは芝、ダート、距離、年齢、性別など路線ごとに分かれ、勝者となった馬はクラスを勝ち上がっていく。そしてピラミッド型に体系化されたレースの頂点にあるのがこのGT(グレードT)レースというらしい。GTレースは全部で23、そして今日の宝塚記念は3歳以上の馬が芝を2200m走る、夏のグランプリなんだそうである。

1日に12レースあるというのだが、メインレースは最後から2番目に行われる。それには理由があって、メインレースに勝った者はその勢いで、そして負けた者はヤケクソで最後のレースに臨むから、売り上げは12番目のレースまで持続するのだそうだ。

200円の入場券を買って競馬場に入ってから、A君に施設を案内していただく。出走前の馬を観察するパドックで馬の見分け方を教わった。毛の艶がよくてお尻の筋肉が丸く張っている馬は調子が良く、汗をかいていたり暴れていたりする馬はレース前にスタミナを消耗しているのだとか。馬券(正式には勝馬投票券と呼ぶそうです)の種類を習う。

単勝(たんしょう)、馬単(うまたん)、馬連(うまれん)、枠連(わくれん)、複勝(ふくしょう)、ワイド、3連複(さんれんぷく)、3連単(さんれんたん)と、8種類もあるらしいのだが、頭がこんがらがってよく飲み込めない。とにかく、競馬新聞の予想欄にプロがつけたマークを見て、マークがたくさんついている馬を3つ選んでみるということに落ち着く。

「◎(本命)」、「○(対抗)」、「▲(単穴:3番目に注目したい馬)」、「△(連下:2着の可能性がある馬)」なんていうマークを睨みながら、その頃にはボールペン片手に競馬新聞を覗き込むおばはんの姿は、えんぴつ耳に挿して背中を丸めた周りのおっさんたちにすっかり溶け込んでいた。

かくして、頭をひねりつつ選んだ馬券は、昨年のこのGTを制した一番人気のタップダンスシチー、かつて「天才ジョッキー」と呼ばれながら不幸な落馬事故のために引退した福永洋一の息子、福永祐一が騎手として乗るリンカーン、そしてGT3連勝中のゼンノロブロイの3連複、マークカードに記入して自動発券機へ走った。

さて宝塚記念GTレースの始まりである。

パドックでその勇姿をお披露目した馬たちは本馬場へと入場してきた。「返し馬」と呼ばれるレース前のウォーミングアップのために1頭ずつ走る。お目当ての馬が目の前を駆け抜けるたびにあちらこちらから拍手喝采が飛び交う。

ファンファーレが鳴り、各馬ゲートイン。そして最後の馬がゲートに入るとゲートが開き、一斉にスタートがきられた。

西日に染められた艶やかな馬たちが色とりどりの勝負服をまとった騎手を乗せて目の前を疾駆していく。ドドドドッ…という勇ましい足音のあとを人々の熱い眼差しと喚声が追いかけていく。遠くのコーナーでの様子はターフビジョンに映し出される映像を睨みながら、いつの間にか周りの観衆は立ち上がり「まくれ〜!」「かわせ〜!」などという怒声、喚声が飛び交う。

第4コーナーを周り最後の直線にさしかかると隣のA君は変貌し、「哲三ぉ〜!」と騎手の名前を連呼しながら右手を突き上げる。湧き上がる周囲の熱気に遅れてはならじと、私も立ち上がり「行け〜!」と声を張り上げたのであった。

戦績結果、私が予想したゼンノロブロイ、リンカーンは3着4着で入ったものの、一番人気のタップダンスシチーは最後に失速、1着は無印のスイープトウショウ、2着は▲△マークがいっぱいついていたハーツクライだったのである。馬単で11−4を当てた人は100円の馬券が28.280円に、そして3連単11−4−6を当てた人は100円が178.840円になったという本日のオッズでありました。

ところで現在世界中を走っているサラブレッドたちの父の血統を辿っていくと、約300年前の3頭の種牡馬にいきつくという。「サラブレッドの3大父祖」といわれるダーレーアラビアン、バイアリーターク、ゴドルフィンアラビアンなのだそうだ。

競馬場で活躍した馬はやがて牧場へ帰り、父や母となって産駒を競馬場へ送り出す。よい血統を守るために交配の組み合わせさえ、人が金銭で売買するという。走るためだけに繁殖を繰り返してきたサラブレッドの4本の足は、その4、500キロもある体重を支えるには危ういほど細く美しい。不幸にもその足の1本でも骨折してしまった場合は他の3本で体重を支えきれず、馬は非常に苦しむのだそうだ。だから薬物による安楽死が施されるらしく、無事にその寿命をのどかな牧場で全うする馬は少ないらしい。

6万5千人の観衆が一気に吐き出され、跡には外れ馬券、読み捨てられた競馬新聞やゴミが散乱し、人々の束の間の熱狂を物語る。帰りの仁川駅周辺の飲み屋には、悲喜こもごものおっさんたちがたむろする。椅子に座ってゆっくりと勝利の酒を味わうのは、少し高めのやきとり屋である。道を挟んで反対側、負け組みは立ち飲み屋のカウンターに身を寄せて、今日の不運を口々につぶやく。

ビギナーズラックにも見舞われなかったおばはんと、第10レースで6−9の馬連を当てたもののトータルで負けてしまったA君は、「あそこでなんで11番が来るんやぁ。あんなもん、誰もマークしとらんかったでぇ」という巻き舌のおっさんの愚痴に頷きながら、冷奴をアテに残念ビールを酌み交わしたのであった。

さあ、就職活動レースも中盤を過ぎた。A君もうちの息子もまだゴールしてはいない。「ワケノチュウヤン」「ユウキンゴールド」、母は君たちに「◎」の予想をつけてあげるからね!







 

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